雪組 『夢介千両みやげ』観劇記

雪組

またしても1階席、そしてはじめての雪組

東京宝塚劇場での観劇は、今回もありがたいことに1階席。
そして、私にとって はじめての雪組観劇 でした。

「日本物の雪組」と言われているからこそ、
最初に出会う雪組が、日本物の『夢介千両みやげ』だったことは、
あとから振り返っても、とても幸運だったと思います。

『夢介千両みやげ』── 人の良さが世界をほどいていく物語

『夢介千両みやげ』は、山手樹一郎の原作をもとにした江戸情緒あふれる時代劇。
物語の中心にいるのは、小田原の庄屋の息子・夢介です。

腕っぷしは強いものの、喧嘩を好まず、どこまでも人が良い。
そんな夢介は、父から
「通人になる修行として千両を使ってこい」
と言われ、江戸へ旅立ちます。

千両は現代でいうと、約1億円前後と言われています。
そんな修行、してみたいような、してみたくないような…

道中で出会うのが、女スリの オランダお銀
最初は夢介の持つ千両を狙って近づいたものの、
夢介の裏表のない人柄、底抜けの優しさに触れ、
次第に心を動かされていきます。

江戸に着いてからも、夢介の周囲では次々と騒動が起こります。
けれど夢介自身は、
「解決してやろう」と肩に力を入れているわけではありません。

ただ、目の前の人を放っておけず、
誠実に向き合い、手を差し伸べる。

その積み重ねによって、物事が自然とほどけていく。

格好をつけていないのに、なぜか人が集まり、
結果として事態が丸く収まっていく――
そんな あたたかさと可笑しさ に満ちた物語でした。


彩風咲奈の夢介という存在

この後、彩風咲奈さんは
退団公演『ベルサイユのばら フェルゼン編』をはじめ、
映像作品も含めて何度も拝見することになります。

そうして振り返ると、
この 夢介という役は、彩風さんの中でも少し特別 な役だったように思えます。

彩風さんといえば、

  • 抜群のスタイルの良さ
  • 色気を含んだ流し目
  • どこか影や使命を背負った役

そうした印象が強いのですが、
夢介は、ほのぼのとして温厚でありながら、
人としての筋はしっかり通っている男。

派手さはない。
けれど現実にいたら、
「気づいたら好きになっている」
そんなタイプの格好良さを感じさせる人物でした。

「真人間」という言葉に宿る江戸のやさしさ

作中で繰り返し出てくる「真人間」という言葉。
それは、江戸という時代が持っていた価値観を象徴するように感じました。

過ちを犯しても、
改心すれば、やり直すことができる。
人は一度の失敗で切り捨てられる存在ではない。

放蕩息子や悪党が改心し、再び人として受け入れられる――
そんな世界観が、どこか懐かしく、同時に現代にも切実に響きます。

一度のミスで炎上したり、死に追い込まれたり、
失敗が許されない雰囲気には息が詰まります。

「やり直しができる世の中であってほしい」
そう強く思わされました。

宝塚の楽しみのひとつに、「原作の予習」があります。たまにスマホを置いて、本を開いてみませんか。


『Sensational』── きらめきが交差する時間

お芝居の余韻を引き継ぐ間もなく、
ショー『Sensational』では空気が一変します。

ギラギラと輝く舞台。
キザで、格好良すぎる男役さんたち。

彩風咲奈さんの、

  • あたたかみのある力強い歌声
  • 少し冷たさを帯びた鋭い流し目
  • 長い脚を存分に使ったダイナミックなダンス

やはりトップスターとして、自然と視線を集める存在でした。

オーロラの場面で心に残った和希そらさん

ショーの「オーロラ」の場面で、
強く印象に残ったのが 和希そらさん です。

宝塚の公演は、構造上どうしてもトップスターに目が向くように作られています。
それは当然のことでもあります。

それでもなお、
ふと視界に飛び込んでくるタカラジェンヌがいる。

和希そらさんは、男役としては小柄ながら、

  • キレのある動き
  • 勢いに流されず、きちんと「止まれる」身体
  • 静と動が同時に存在するダンス

その確かな技術と存在感で、
舞台の中で自然と目を引く存在でした。

次々に魅力が交差していくショーの時間。
宝塚ファンの間でよく使われる
「目が足りない」
という言葉が、これ以上なくしっくりきた瞬間です。

(舞台の端々にいたるまで、
観たい人、観たいダンス、観たい表情が多すぎて、
目がいくつあっても足りない、という意味で使われる表現です)

宝塚の役どころについて(覚え書き)

トップスター
その組を象徴する存在。
舞台の中心に立ち、作品全体を牽引します。

2番手
トップを支えながら、
物語やショーに厚みを与える重要なポジション。

3番手
実力と個性が際立ち、
舞台に奥行きをもたらす存在。

観劇を終えて

雪組の『夢介千両みやげ』と『Sensational』は、
宝塚の創始者・小林一三先生が目指した
「家族で観られる大衆演劇」
という理念を、まさに体現した公演だったように思います。

人情に笑い、
華やかさに心を奪われ、
観終えたあとに、静かでやさしい余韻が残る。

いつか、
こうした日本物の作品を 母と一緒に観に行けたらいいな
そんな思いが、自然と胸に浮かぶ観劇でした。

公演おやつ

今回の 公演おやつ は、
榮太樓總本鋪のどら焼きでした。

一口かじると、まず感じるのは ほっこりとした安心感
けれどその奥に、
あんこの上質な甘みや、
生地のきめ細かさ、
老舗らしい丁寧な味わいがきちんとあります。

舞台の熱気が少し落ち着いたあとで味わう甘味は、
観劇の記憶を、もう一度そっと呼び起こしてくれる――
それが、私にとっての 公演おやつ です。

舞台を思い出しながら、家でいただくどら焼きもこれまた一興。


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記事の内容や感じ方は、すべて個人の記録として綴っています。

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