ネバーセイグッバイ

宙組

――東京宝塚劇場で出会った、成熟した男役の色気

宙組公演
『NEVER SAY GOODBYE ―ある愛の軌跡―』

この作品を観たのは、東京宝塚劇場の一階席でした。
宝塚を観始めてまだ日が浅く、
それぞれの組の個性に出会うこと自体が、ただ新鮮で楽しかった頃です。

同じ劇場でも、席が違うと、舞台の受け取り方は驚くほど変わります。
視線の高さ、演者との距離、表情の届き方。
ネバーセイグッバイは、そうした条件も含めて、
静かに印象が積み重なっていく作品でした。

静かに胸に残る、骨太な物語

スペイン内戦という重い時代を背景にしながら、
物語は過剰な演出に頼ることなく進んでいきます。

正義とは何か。
信念を持って生きるとはどういうことか。
そして、愛するという行為が、人をどこまで強くし、
同時に、どれほど孤独にするのか。

折しも、ロシアによるウクライナ侵攻という世界情勢も重なり、
この物語が、遠い昔の出来事とは思えず、胸に迫るものがありました。

愛する者同士が、愛するが故に、別れを選択するということ。
愛のために、祖国のために、そして自らの信念のために。

時代の波に翻弄されながらも、
それでも自分の真実を探し求め、
信念を貫こうとした人々の物語として、強く心に残りました。

宙組の重厚感のあるコーラスが、
劇場の隅々まで、市民の怒りや祈り、そしてエネルギーを
確かに届けていたように思います。

男役として熟成した、真風涼帆さん

この作品で強く印象に残ったのは、
真風涼帆さんの男役としての成熟です。

若さや勢いで押すのではなく、
長い時間をかけて積み上げてきたものが、
立ち姿や声の低さ、佇まいに自然と滲み出ている。

感情を前に出しすぎないからこそ、
沈黙や間、ふとした視線に、
役の迷いや脆さが確かに宿ります。

理想像ではなく、
現実の中で葛藤し続けるひとりの男。
ネバーセイグッバイは、
真風さんの男役が持つ深みと説得力が、
最も端正に表れた作品のひとつだと感じました。

物語の終わりに添えられる、フィナーレ

一本物の公演は、
お芝居の幕が下りると、

物語の流れをくんだ、ショーのダイジェストのようなフィナーレがあります。

役を生ききったタカラジェンヌたちが、
まだ完全には役を脱がないまま舞台に立ち、
その世界の空気を保ったまま、階段を降りてくる。

拍手の中で、
物語は終わるのではなく、
観る側の記憶へと、そっと手渡されていく。

フィナーレは、
舞台と客席の境界線を、静かに溶かす時間なのだと思いました。

中でも、この公演のデュエットダンスは秀逸で、
二人の呼吸が、驚くほど自然に重なっていました。

最後の決めポーズは、
お互いを深く信頼していなければ、到底挑めないもの。
そして、強靭な体幹がなければ完成しない構図でもあります。

まるで美しい板チョコレートのように、
しなやかで、無駄のないラインを描く潤花さんの姿に、
思わず息を呑みました。

それを、幅わずか二メートルほどしかないという銀橋で決めてしまう。
恐怖や緊張を超えられるほど、
きっと、たくさん、たくさん稽古を重ねてきたのだろう――
そう想像せずにはいられません。

完成された一瞬の美しさの奥にある、
積み重ねられた時間と努力。
そのすべてに、自然と敬意が湧いてきました。

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レンズ越しに祖国を、愛する人を見つめ、真実を追い求めていく姿が一本筋が通っていて素敵です。


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公演の思い出として

この公演では、公演おやつ「紫音」も印象に残っています。
真風涼帆さんの生まれ故郷・熊本と、宙組の組カラーにちなんだ紫色。

国産小豆と唐芋風味のホイップチョコを、紫芋クッキーでサンドしたもので、

小豆のザクザクした食感がアクセントになっており、
目にも美しく、観劇の日の空気を、静かに封じ込めてくれるようなお菓子でした。

色を知るということ

この日、東京宝塚劇場を後にしながら、
胸の奥に、静かな高鳴りが残っていました。

宙組の舞台を観たからこそ、
他の組の舞台にも、自然と心が向いていく。
それぞれの組が持つ色や呼吸、
同じ宝塚という世界の中で、
どんな違いを見せてくれるのだろう――
そんな想いが、ふと芽生えました。

まだ知らない舞台が、
まだ出会っていないタカラジェンヌが、
この先も、たくさん待っている。

宝塚を観るという楽しみが、
静かに、広がっていく予感を覚えた夜でした。

公演おやつは同じ名前のクッキーでしたが、チーズケーキもあるようです。紫芋好きは要チェックです。


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